The Night on Java Report

タイトルThe Night on Java
(仮称: Night for Java Version 2.0)
日時1999年9月13日(月) 18:00〜20:30
会場テピアホール (東京都港区北青山)
参加対象Javaカンファレンス会員または非会員 (いずれも無料)
参加人数定員140名、実際は100名ぐらい?
主催Javaカンファレンス (実行委員会: Duke-in-the-Box BOF)
参考「Javaカンファレンス」2000年度総会後の記念シンポジウムとして開催

毎回大好評の、有志による Java プロダクトの紹介ステージである。 今回も「世界の佐藤」氏が進行役を努める中、各製品について10分ぐらいで、 デモンストレーションが行われた。

(1) Interpot

    http://interpot.nifty.ne.jp/

ニフティでサービス中の「Interpot」が Macintosh に対応したということで、 iMac を持ち込んでのデモンストレーションが行われた。 心が安まるようなクラシック音楽が BGM として流れる中、白鳥やスズメ、象や 殿様ガエルや犬、夜になると現れる怪物などを大量に出現させて、不思議な世界 を醸し出していた。「これはデモなのでたくさん出ますが、実際のサービスでは こういうことはありませんので、ご安心ください」とのこと。 さらに、傘や東京タワーなどのインテリアを地面に配置して、いろいろな視点か ら眺めてみたり、他のユーザーの木に設けられた看板に貼られた絵を次々めくっ てみたり、いろいろな楽しみ方があるようだ。

(2) meta-DRAW

    http://www.bridgemw.cl.jp/core.html

一言で言えば、Java で「イラストレーター」のようなドローツールを作ってみ たということだが、Java 2 ではなく JDK 1.1 ベースで動作しているとのこと。 (実演に使用したのは Pentium 2-266MHz のマシン、JDK 1.1.8) 今回は、作図機能・マスターページ・レイヤ・アニメーションといった機能が実 演された。アニメーション機能では、ズームインや移動、回転などが披露された が、自分でプログラムを作成することによって制御が可能である。 また、ポストスクリプトデータや CAD データの読み書き機能も搭載しており、 実際にそれらのベクトルデータを読み込んで表示させていた。当然、これらの エンジンも一から作成したそうである。 なお、保存データのフォーマットとして XML を採用しているため、エディタで バグっているところをテキストエディタで修正できるという利点もあるらしい。 開発に当たって苦労した点として、絵の入ったコンボボックスやボタンまでも 自分で作らなければならなかったということを挙げていた。 なお、作成したプレゼンテーションは、metaplayer というツールを使って表示 することができるので、「Java を使う人は、パワーなんとかは使わず、meta- DRAW を使ってプレゼンをするのが正しい」と力説されていた。

(3) teikade

    http://www.pfu.co.jp/teikade/

半年前の 2.0 発表以降、開発者の佐藤氏も白神氏も別プロジェクトで多忙になり、 一時はとん挫しそうになってしまっていたが、2.0 のプラグイン機能だけでも リリースしようということで、今回 1.9 が発表された。 Option → Plugin メニューにより、teikade の中からユーザが作成したプラグ インを使用できるというのが、このバージョンの追加機能である。 サンプルとして、ダイアログの表示や Transcript Window へのメッセージ表示 などが実演された。この機能を使えば、コンパイラを切り替えるといった利用例 も考えられるとのこと。 さらに「佐藤氏の置き土産」として、ワークスペースというサンプルのデモが 行われた。これは Pnuts を使用したインタプリタで、「1+12」と入力すると 「13」が表示されたり、「"Hello"+"World"」と入力すると「Hello World」が 表示されるというような素晴らしい機能が披露された。 「このネタでステージに上がるのは今日が最後になる」と言いながら、佐藤氏も デモに加わったが、あいにくPnutsを勉強していないとのこと。残念。

(4) Boogie WebStation / Rondo

    http://www.gram.co.jp/boogie/

「Boogie」は、インターネット上に仮想のネットワークを作り、チャンネルを 使用してメッセージを送ることが出来る Java アプリケーションだそうである。 新しくコミュニティを作成したり、また2つのコミュニティの架け橋を作ったり することによって、どんどんネットワークを広げていくことが出来る。 今回の「Boogie WebStation」は、そのアプレット版である。従来は使用して いなかった1000番以降のチャンネルを使って、放送のようなことを実現できると いう新機能がある。 「Boogie」では文字のメッセージしか流すことが出来ないので、詩を流すことを 計画中らしい。また、とある電子モールで採用を検討中とのことである。

「Rondo」は、Java 版のインスタントメッセンジャーである。複数の相手に メッセージを送った場合、モバイルエージェントが1人ずつ順番に訪問していく という特徴がある。 また、サーバ版を使用すると、お互いのプロファイル情報を交換したり、サーバ を選択して接続することが出来るようになる。 「Rondo」にはメッセージの追跡機能があるので、メッセージが誰のところで 止まっているかを見ることが出来る。しかし、催促のメッセージを「Rondo」で 送ってもさらに止まってしまうだけので、電話をするなりして連絡してください とのこと。

(5) JSparrow

     http://www.pfu.co.jp/jsparrow/index-j.html

「JSparrow」は、Java プログラムの中から OpenGL を使って3次元画像を表示 するための OpenGL binding と呼ばれるプログラムである。 さっそく、Netscape Navigator のアプレットで、非常に高速に3次元画像を 表示していた。比較のために、普通に Java だけで計算を行って3次元画像を 表示させるプログラムを動かしてみたところ、球を描くだけで何秒もかかって しまっていた。「JSparrow」を使用すれば、P5-120MHzのPCに1万円ぐらいの 3次元画像ボードを入れるだけで、これぐらいのスピードが出るということだ。 次に、Java の本には必ず載っているスケッチブック機能を使って、「Speaking Mouth」で有名な中山さんがイラストを描き、それをリアルタイムで3次元の 画像に貼り付けるというデモが行われた。中山さんの描いた「へのへのもへじ」 や赤いポケモンのイラストが、立方体に貼り付けられて回転していた。 さて、「JSparrow」は OpenGL binding の標準候補3つの1つに挙げられて いるが、「JSparrow」の特長はCのソースコードをそのまま持って来られる ことにある。Red Bookのサンプルからいくつかを表示させていたが、800行ある OpenGL のロゴは30分たらず、今は亡きシリコングラフィックスのロゴが動き 回る7000行のデモは手で直しても3時間程度で動かせたとのこと。もちろん、 実際は機械的に変換できるので、さらに短時間での移植が可能である。 最後に、中山さんが昨日休日出勤して5時間かけて作られた力作「文鳥カー レース」が披露され、会場からの拍手喝采を受けていた。

(6) Kcal

    http://www.axe-inc.co.jp/kvm/kvmj.html

「Kcal」は、簡単に言うと KVM 上で動作する電卓である。オブジェクト指向と いえば電卓、と言うことで作成してみたそうだ。さっそく Palm を取り出して 実演していたが、単なる電卓だけではなく、ここで手を振っている人 (Duke) の表示にはスレッドを使用している。 さらに、2台の Palm を並べて、IRDA 機能により計算結果を転送するという 機能が紹介された。これで飲み会の時の割り勘もバッチリ、とのこと。

別のプログラムとして、タートルグラフィック(LOGO)を表示するプログラムの 実演が行われた。Palm に搭載された 68000 CPU 上で KVM が動作し、その上で LOGOの処理系が動作しているという、インタプリタだらけのデモである。

(7) UIBuilder for KVM

    http://www.mei.co.jp/~nakato/kvm/UIBuilder/man/intro.html

「UIBuilder for KVM」はその名の通り、KVM 上で UI を作成することが出来る アプリケーションである。まず、デザイン画面で部品を置く枠を選択して、 その中に部品を割り当てていくという方法で、デザインを進めていく。この時、 デザイン画面に部品のイメージを表示しているのではなく、実際のボタンの インスタンスを置いているので、実行した時のイメージがつかみやすい。 このようにして作ったデザインを、その場で Java のソースに変換することが 出来るということで、生成されたソースプログラムをメモ帳で表示させていた。 このプログラムに、ボタンを押した時の処理を追加すれば、簡単に UI を使用 したアプリケーションが出来上がる。実際にコンパイルしたアプリケーションを 動作させていたが、「UIBuilder」でのデザインがそのまま反映されていた。 KVM では 64kB のメモリしか使えないが、それなりのものが出来るということを 実感されたようだ。

「数理システム」という難しそうな名前の会社と紹介されて、「面白い Java な 仕事ありません?」と中藤氏。それを聞いて、佐藤氏も「面白い仕事、我々も 募集しています」と宣伝していた。

(8) Murmur / Sig'n

    http://www.sons.co.jp/Murmur/
    http://www.sons.co.jp/Sign/

「Murmur」は、画面上のいろいろなところに、マンガの吹き出しのようにして メッセージを表示することが出来る、新感覚のチャットソフトである。 時間が経つと、古いセリフが画面上から消えてしまう。これを見たユーザから 「デジタルデータは消えてはいけないし、検索も出来ないといけない」と 怒られたそうだ。 今回、サーバを Java プログラムではなく CGI で書き換えた「Murmur BABY」を 提供したところ、税込1.980円という低価格のせいもあり、結構使ってくれる人 がいたそうだ。また、ソネットの「ポストペットパーク」で行われたウルトラ クイズの決勝戦でも使われたとのことである。

「Sig'n」は、見ての通りの掲示板ソフトである。やはり、画面上のいろいろな ところにメッセージを掲示することが出来るという特長があり、レスを付けた 時に参照関係を線で表すことが出来る。 したがって、声の大きい人のメッセージに対して、弱気な場合は離れた所に メッセージを書く、という使い方も可能である。

当初の予定では 8:30 までだったが、意外と早めに終わってしまったので、 佐藤氏への質問コーナーになった。

Q.「キュートではどんなことをしたいですか?」
A.「その名の通り、胸がキュンとしてしまうようなことをやりたい」

(9) KVM 用 SWATCH アプリケーション

佐藤氏はあまり好きではないと言う Palm を持ち、今回の Night for Java の プロデューサ・宮崎氏が飛び入りで発表。彼がデモしたのは、Swatch のように インターネットタイムを表示できるというアプリケーションである。 インターネットタイムなのに、なぜかタイムゾーンが日本にしか対応していない という制約があるそうだ。

最後にもう一度、発表者とスタッフの紹介があって、盛大に終了となった。


KAWAGUCHI, Koji <koji@k-kawaguchi.com>